レポート「夏がとまらないですね ~藤岡拓太郎原画展~」(大阪・blackbird books)&「コーヒー吹き出さないよう気をつけ展」(東京・CLOUDS ART+COFFEE)

イラスト描き下ろしのポスター。デザインも自分で。

ポスターといってもどこかに貼ってもらったわけではなく、SNSでの告知用のもの

 

春、大阪の書店と東京のギャラリーから「夏に展示をやりませんか?」と声をかけてもらって、人生で初めての個展をいきなり2つ準備することになった。展示の核にしたのは、今年(2018年)の夏で刊行1周年となった、この1ページ漫画集。

 

大阪の会場は、御堂筋線・緑地公園駅近くのblackbird books(ブラックバード・ブックス)。「夏がとまらない」刊行時からお世話になっている本屋さん。ここで展示できたらいいなと思ってるところへの依頼だったので驚いた。個展タイトルは、「夏がとまらないですね ~藤岡拓太郎原画展~」にした。

4刷の重版のとき、オビにツイートを使わせてもらった

 

漫画家の原画展というと生原稿の美しさにうっとりするようなものだと思うのだが、自分の原稿は美しさとは程遠い、何しろ使っている紙もルーズリーフ、ただ原画を展示するだけではおもしろくないなと思ったので、原画と完成ページを見比べられるような形にした。

原画の隣に本から切り取ったページを貼り、左上には、その漫画へのコメントや執筆時のエピソードなどを書いた。

初めての展示会をやるにあたって、展示の際の額縁やパネルの意味って何なんやろうか?と考え込んだ。額装することで見栄えが良くなる感じはまだ分かるが、パネルは、これ、額縁も無いのになんで壁から数ミリ飛び出す必要がある?と思って、試しに段ボールを切り取り、1ページ漫画を貼り付けて家の壁に飾ってみる。・・・いい。画用紙に貼り付けるだけで十分だろうと思っていたが、こっちのほうが断然よい。なぜ数ミリぽっち立体的にするだけでこんなによくなるのかは相変わらず分からないが、展示する30作品を、パネルで製作することにした。額縁は高いし、パネル化の方法もよく分からなかったので、このまま段ボールで全部を自作することにした。意外と味わいも出そうだ。

家にあった段ボールがなくなってきて、スーパーの隅に積まれた段ボールをじっと見つめたりもしたが、できるだけ清潔なほうがいいなと思い、足りなくなった分は段ボール通販サイトで注文した

 

段ボールに貼るだけだと少し貧乏くさい気がしたので、色画用紙を間に貼った。お店で実際に展示してみたとき、これが予想以上に楽しげな雰囲気を醸し出してくれていて、あー面倒くさかったけど色画用紙のひと手間をやってよかったと思った。

 

原画付き1ページ漫画パネルを15枚。原画は付けずに完成ページを大きく拡大した1ページ漫画パネルを15枚。この拡大印刷作業など、ナナロク社にも協力してもらった。その他、会場で販売するサイン本やらポストカードやらの準備をして、「夏がとまらないですね ~藤岡拓太郎原画展~」は約一か月間、無事開催された。

2018年7月17日~8月12日

夏がとまらないですね ~藤岡拓太郎原画展~(大阪・blackbird books)

入場無料

来場者数:約600人

サイン本売上数:486冊

blackbird booksは、店主の吉川さんが毎日ひとりで営業している。原画展初日、開店前に吉川さんと二人で展示作業をした。展示物を壁に貼るための、ネリケシのような「ひっつき虫」なる商品が存在することも今回初めて知った。嬉々として「ひっつき虫」で段ボールパネルを展示していったが、お店の壁と段ボールとひっつき虫の相性が良くなかったのかパネルがよく落ちることが判明、のちにテープで補強をした。

この原画展では、「合言葉ポストカード」というのをやった。レジで「夏がとまらないですね」という合言葉を言うと、限定ポストカードがもらえるという企画。これを思いついた時、この展示は成功だなと思った。自分もお店に行って言いたいと思ったから。合言葉企画に乗ってくれて、最終的に400人以上のお客さんからの「夏がとまらないですね」を浴びることになった店主の吉川さんに感謝。

合言葉ポストカード

 

Tシャツは、「夏がとまらない」を一緒に作ったナナロク社の村井さんがこさえてくれた。半ズボンはTwitterとInstagramで「捨てようと思っている男児の半ズボン」を募集して、フォロワーの方から送っていただいたもの。洗濯物が干してあるようなイメージで、期間中、店先に吊るしてもらった。

 

 

連日盛況、準備していたサイン本もすごい勢いで売れていく。blackbird booksは、うちからわりと近いので、期間中何度もチャリンコを飛ばしてサイン本をつくりに行った。お客のふりをして、自分の漫画を読む人々の様子をこっそり見ることができたのはよい思い出。

https://s.maho.jp/blog/feec08c5c2d4139d/695984372462/

Hump Backの林萌々子さんが原画展初日に来てくれて、その時のことをブログに書いてくださった。今回の展示の匂いが閉じ込められているような、いい文章。Hump Backが今年発表した「拝啓、少年よ」、サイン本つくりながら聴いていた。

 


 

 

 

 

大阪の原画展が終わり、一日おいて8月14日、東京・高円寺での個展がはじまった。会場の「CLOUDS ART+COFFEE(クラウズ アート プラス コーヒー)」さんから展示のお話を頂いたとき、コーヒーを飲みながら作品を鑑賞できるギャラリーだと聞いて、すぐに「コーヒー吹き出さないよう気をつけ展」というタイトルが思いついた。自分が描いている1ページギャグ漫画にぴったりのタイトルとコンセプト。自分でも行きたい。(と言いながら、色々とあって自分はこの展示には行けなかった。無念)

 

とにもかくにも、東京展はこのタイトルが浮かんだ段階でもう、いい展示になるなと思った。

2018年8月14日 ~ 8月26日

コーヒー吹き出さないよう気をつけ展(東京・CLOUDS ART+COFFEE)

入場無料

来場者数:約1900人

サイン本売上数:970冊

CLOUDS ART+COFFEEは、店主の大久保さんがひとりで営業しているアートギャラリー

 

自分の漫画には小学生の読者も意外といることが分かっていたので、子供の目線の位置にも展示してもらった

 

この高円寺展で展示したのは、50枚の1ページ漫画パネルと、15枚の原画付き1ページ漫画パネル。大阪展と同じく、段ボールパネル

 

この展示で大活躍だった顔出しパネル。店主の大久保さんのお知り合いの方が案を出してくれて、製作もしてくださった

 

設置型ではなく手持ち式にしたのはたまたまで、最後のコマが穴あきになったから。これが思いがけずよかった。みんなかわいい

 

休日はえらい行列

 

メッセージ用の1600枚のメモ帳は全部なくなった。一番下の台紙にまで書かれとった

 

http://hiko1985.hatenablog.com/entry/2018/09/04/005610

「夏がとまらない」の封入冊子にも文章を寄せてくださっているヒコさんが、この展示に来てくれて、ブログ「青春ゾンビ」にその日のことを書いてくださった。

東京展でも合言葉を言いたいという声に応えて、「合言葉塩アメ」というのをやった。塩アメおじさん役はナナロク社の村井さんが引き受けてくれた。村井さんに「夏がとまらないですね」という合言葉を言うと、このイラスト付き塩アメがもらえるというシステム。期間中、村井さんは何度かギャラリーに塩アメを抱えて出没した。

サイン本は約1000冊つくり、ほぼ完売

 

最終日、コーヒーが全部売り切れるという、展示のテーマが無に帰す事態に

 

大阪と東京、どちらの展示も、「来た人がみんな笑っている」というのが何よりもうれしかった。「コーヒー吹き出さないよう気をつけ展」は我ながら、今後これを超えられるのか?というくらい最高のコンセプトだと思うけど、2回目はやらないと思う。やるなら新しいことを。自分でも行きたくなるような展示を、またやりたい。1ページ漫画展の全国ツアーとかやれたらおもしろい。展示の楽しさを知った夏だった。

 

思いがけず同時期に初めての個展の機会をくださったblackbird booksの吉川さんとCLOUDS ART+COFFEEの大久保さん、ご協力いただいた皆さま、展示に足を運んでくださった皆さま、ありがとうございました。(2018年9月9日)